東京高等裁判所 昭和54年(う)1992号 判決
被告人 松原利治 外一名
〔抄 録〕
本件夕食会は、すでに認定したとおり、五十畑候補のための選挙運動のこれまでの苦労に対する謝礼とともに、残された終盤の選挙運動において五十畑候補のための投票並びに投票とりまとめ等の選挙運動に精励してもらうことの報酬の趣旨で開かれたものであること、右夕食会は、飲食営業を専門とする飲食店において、法定の弁当料五〇〇円をはるかに超過した一人当り二〇〇〇円相当の飲食物が提供され、選挙運動者多数が一堂に会して共に飲食・歓談をしていることなどの事実に照らせば、本件夕食会における飲食物の提供は、直ちに公職選挙法二二一条一項一号にいう饗応に該当し、同法一三九条によって認められる弁当の提供又は同法一九七条の二、同法施行令一二八条の二第一項にいう実費弁償ないし弁当料の支給にあたらないこと明らかである(なお、所論は、右弁当料の額に関する原判決の解釈を争い、本件夕食会において提供された飲食物の価格が、右弁当料の額と大差がなかったと主張する。しかし、同法一九七条の二の規定の趣旨は、公職の選挙の公正を保持し、かつ、候補者の選挙運動費用を膨大ならしめないため、実費弁償についても一定の制限を設け、その範囲内での支給を許すこととしたものと解される。したがって、同法施行令一二八条の二第一項ホに規定する弁当料は、一食について五〇〇円を越えて支給することは許されず、一日に数食を摂った場合にも、各食について五〇〇円を越え、かつ、その合計が一五〇〇円を越えて支給することは許されないものと解すべきである。これを所論のいうように、食数や各食の価格にかかわらず、一日について総額が一五〇〇円を越えない範囲で支給することができると解することは、同条の明文に反するのみならず、同法の趣旨にもとるといわなければならない。同様に、実費弁償は、同法施行令一二八条の二第一項一号に掲げる区分に応じて、その範囲内で支給すべきであって、同号へに定める茶菓料を同号ホに定める弁当料に加算し、その合計の金額を弁当料として支給することは許されないものと解すべきである。)。それ故、本件夕食会で提供された飲食物全体について饗応罪が成立するとして、同法二二一条一項一号を適用した原判決は、結局正当として是認できる。
(岡村 林 新矢)